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【読書】ナイト&シャドウ(柳広司)

ジョーカー・ゲームシリーズの柳広司の作品と聞いて喜び勇んで手に取った一冊。あのヒリヒリするような、そして人の裏を掻く展開のスパイ物かと思ったら、今度は表といえば表、裏方といえば裏方、警護官いわゆるSPの物語。日本の首相担当の警護官が、アメリカ大統領直属のシークレットサービスに期間限定の研修に参加中、大統領を狙う爆弾テロ計画に巻き込まれる。が、実は犯人の本当の狙いは...といったテロとの戦いの話。

と言っても戦争物なのではなく「何かが起こってしまっては敗北。何も起こらないのが勝ち」という、ある意味成功して当たり前、うまく進んでも誰も褒めてくれないが、失敗した瞬間に袋叩きにあうという切ない仕事。

仕事そのものにプライドを持ち、やる気を感じてないととてもじゃないけど神経が持たないであろうことが容易に想像できる。大変な仕事である。実際のSPの皆様、毎日お疲れさまです。

 

無数にある相手の攻撃手段をどれだけ予測できて、現場でどこまで洞察力を発揮して、瞬時に行動に移れるのか。想定できるシナリオを何パターンも思い浮かべ、そこから取捨選択して相手を追い詰めていく。うーん、強靭な精神と肉体、明晰な頭脳、冷静な判断力が必要なんだろうが、本当にこんな人、いるんだろうか、いや、一般市民の目に触れないだけで実在するのかもしれない。男としてはある意味憧れてしまうレベルの主人公なのである。

が、この手の小説にありがちなのが、完璧超人に見せかけて女性関係が苦手だという黄金パターン。ジョーカーゲームに出てくるスパイは女を篭絡するのも仕事の一つとして完璧にこなすのだが、警護官の仕事は対象の保護がメインで、女性との付き合いは含まれていない。この辺が設定の違いなのだろう。最後くらいは上手くやるのかと思ったら、空港で衝撃の平手打ち。あーあ、って感じだったけどちょっと笑ってしまった。

それにしても、結局、本当の黒幕は誰だったんだろうか。そもそもテロ実行犯は誰をなぜ狙ったのか。大統領の不敵な笑みと謎の英語挨拶にはどんな意味が含まれていたのか。種明かしされることはないのだろうけど、あーでもない、こーでもないと自分で想像するのは楽しいものである。

 

ナイト&シャドウ

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