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科学技術は使い手によって天使にも悪魔にもなる「禁断の魔術」(東野圭吾)

東野圭吾のガリレオシリーズ長編。取りあえず出ると読んでしまうシリーズ物の一つであるが、出先で文庫本を見かけたので飛行機内で読破。

ストーリー

ホテルのスイートルームに偽名で宿泊した女性が死亡した。殺人ではなく病死であったが、部屋に残された飲みかけの2つのビールグラスが同室にもう一人いたことを匂わせる。

死んだ女性には同居している弟がいた。高校時代には物理研究部に所属して湯川准教授との接点を持ち、その後入学したばかりの帝都大学を辞めて町工場に就職したのは理由があった。姉への復讐である。

感想

序盤からストーリーは明確で、主人公である弟がどのようにして姉の復讐を果たすのか、に焦点が絞られて進んでいき、難しい伏線や込み入った人間関係はほとんどない。

最終的に復讐は成功するのか、やるとしたらどう実行するのか、最後は犯人として逮捕されるのか、そのあたりのことだけを気にしながら読み進めていくことに。

最終的な結末は科学的な話ではなく、人情的な話になってしまっていた。

この流れはガリレオシリーズではなく加賀恭一郎シリーズっぽい。ガリレオシリーズには「容疑者Xの献身 」のようにゾクっとするアリバイトリックや科学的な謎の解明をメインにしてほしいのである。

タイトルの「禁断の魔術」とは。

昔から科学技術の発展には軍事利用が深く関わっているのは周知の事実で、原子力爆弾はその最たるものであろう。

最後の最後で『科学技術は世界を制す』との言葉を残して死んだ主人公の父親が科学者としての挟持をどう持っていたのかを知る。そこには、やはり科学は使う人によって悪魔の技術になる可能性を秘めていることを改めて思い知ることに。

本来は封印すべき技術を軍事転用して殺人兵器として使う、これが禁断の魔術なのである。科学は使い手によって変わってしまう。ぜひとも未来を切り開くために使ってもらいたいと願う。

 

禁断の魔術 (文春文庫)

禁断の魔術 (文春文庫)