【読書】いつかその舞台へ「富士山1周レースができるまで」鏑木毅
富士山を1周走る「ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)」を企画から完成までを、中心人物である鏑木毅さんと福田六花さんが語ったものです。
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鏑木さんは、ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)で日本人最高位を獲得した世界的トレイルランナーで、日本の第一人者。
2009年の「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」の様子はNHKで放送されて書籍にもなった伝説のレース。
練習へのモチベーションが上がらないときに繰り返し見て、「いつかこの舞台に」と気持ちを奮い立たせているものです。もちろん、まだまだ全然届かないのですが。
そんな鏑木さんが飛行機の中から富士山を見て、日本で初めての100マイル(160km)トレイルランレースを富士山で開催することを決意したところから、苦難の道程がスタートします。
鏑木さんの夢を叶えたい。最初は3人で始まったプロジェクトに次々と人が集まってきます。
その一人が福田六花さん。医師にしてランナーにしてトレイルランレースのプロデューサー。
コースの選定、地元や警察への届け出、環境への配慮、エイドステーション、医療チームなどなどトレイルランレースを作るとは、これほど大変なのかと驚きの連続です。
まさか、右回り左回りが直前で変更になっていたり、毎年のコースや日程が微妙に変わってしまうのには、そういう理由があったのか、と。
鏑木さんと福田さん、二人とも市民ランナーから見ると雲の上の存在です。
しかし、そんな二人には面白い共通点があるのです。それは、決して幼少期からのエリートランナーではなく、トレイルランニングを本格的に始めたのは社会人になってからということ。
鏑木さんは早稲田大学競走部に入部するものの、怪我によって箱根駅伝に出場できずに県庁に就職。仕事の息抜きに走り始め、トレイルランの楽しさを知り、出場した大会で優勝します。そこから鏑木毅伝説が始まるのです。
福田さんは医師として勤務した病院での激務とストレスから太り、自称「メタボ医師」になってしまいます。信州の病院に転勤してから、野山を歩き始め、ハーフマラソンに出場するなどして、トレイルランニングの世界に入っていきます。
誰もが世界的なランナーになることはできないけど、面白いと思ったことを始めるのに遅いということはない、ということを実践したエピソードです。
鏑木さんがUTMFを走る女性選手を見ながら、「トレイルランニングなんてやらなければ、もっと他の文化的なことなんかに出会えたかもしれない」と思うシーンがあるのですが、私を含め全員が「トレイルランニングをやっていたから出会えたことがたくさんあるんです」と言うに違いないでしょう。
それほど、トレイルランニングを始めて出会ったことや経験したことが、一言では表せないほど山盛りあるのです。
いつかUTMFに出場して、その壮絶なる世界に身を投じて己の限界を感じて、そして越えていきたい。
朝日が富士山に映える姿を見てみたい。
そして、ゴール地点で鏑木さんと話してみたい。
まだまだUTMF出場には遠いけど、始めるのに遅いなんてことはない。
でも、残された時間はそんなに多くないかもしれない。
一歩ずつ、ゆっくりとでも進んで行きたいと決意を新たにした一冊でした。
ヤマケイ新書 富士山1周レースができるまで ?ウルトラトレイル・マウントフジの舞台裏
- 作者: 鏑木毅,福田六花
- 出版社/メーカー: 山と渓谷社
- 発売日: 2015/09/18
- メディア: 新書
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