【読書】「希望荘」宮部みゆき
主人公はひょんなことから私立探偵になってしまった男。
田舎出身で出版社で編集者をしていたときに逆玉結婚するも、妻の不倫によって離婚。
幸か不幸か「事件を引き寄せてしまう」体質がゆえに、流れで探偵になってしまったのである。
そんな探偵が事件を解決する短編集。
持ち込まれたときは小さく終わるかと思った話なのに、踏み込んでいくと殺人事件だったり、狂言誘拐だったり、と少しずつ話が大きくなっていく。
事件を起こした人は、普通に淡々と生きているはずだったのに、ちょっとしたはずみで道を外した人ばかり。
どこにでもありそうだけれど、どこにでもあってもらったら困る、そんな事件ばかり。
推理小説物の基本である、犯人は序盤に登場させておく、はしっかり守られていて、ヒントになる会話の端々や行動は後から振り返れば「そういうことか」と納得できるものばかり。
宮部みゆきの最近の著書は「英雄の書」や「ブレイブ・ストーリー 」といったSFに近い物が多いけど、「火車」のようなミステリー物こそ宮部みゆきの真骨頂だと思っている派なので今回はとても楽しかった。
全編共通しているのは、解決したところで救いがない、というところ。
でも、きっと日常にこういうことは紛れ込んでいるんだろう。