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【読書】島はぼくらと(辻村深月)

今となっては、なぜこの「島はぼくらと」を読もうと思ったのか全く思い出せない。予約したことすら忘れかけていた頃、図書館から予約確保の連絡が来て読み始めることになったのだけど、結果としてこの本を読めて良かった。

 

大まかなストーリー

瀬戸内海に浮かぶ小さな島、冴島。そこに暮らす4人の高校生を中心にした島での暮らし、若者の葛藤、大人達の呪縛、色んな物が混ざり合ってストーリーが進められていく。というのも、一応主人公らしき人はいるのだけど、途中で各高校生の視点に切り替わって話が進められて行き、視点の移り変わりがスピーディで面白かった。

島を出て行く若者達、Iターンで島に渡ってくる若者、医師であることから逃げ出した若者、元オリンピック選手のシングルマザー、漁業中心の街における網元家の役割、島から出ることができない運命を背負った少女、などなどこんな小さな島で、こんなに色んなことが起こるわけがない、と思いつつ、でもこれはこの島だけの話ではなく、我々の日常の中でも起こりえること。

 

むき出しの悪意を向ける人

途中、元オリンピック選手が地元を逃げるようにして島に渡ってきたシーンがあるのですが、その中で印象的な言葉がありました。

「人が乗っかるのは、栄誉だけではない。人間は、自分の物語を作るためなら、何にでも意味を見る。」 

ああ、そうか、そういうことなんだ。なぜ人は自分がやったことでもないのに、他人にすり寄り、悪意のある言葉を吐き、知り合いだということを自慢したりするのか。全ては自分の物語を作り上げたいから。

でも、それはきっと自分に自信がなくて、そういった言葉の鎧で着飾らないと自分自身がどこに立脚していいのか分からないからなんだろう。でも、自分に自信を持っている人なんて世の中にどれくらいいるんだろうか。と思ったけれど、そもそも他人と比べて自分が上にいるとか下にいるとか考えるからなんだろう。

そういうことをする人はヒマなんだな、と思っておけばいいのだろうが、悪意を剥き出しにして向かってくる人も存在するのだから、その防御策だけは考えておきたい。

 

美人で性格が良いとか

この物語で印象的だったのは、網元の子として島に住むことが宿命である女の子。色が白く、美形でお金持ち。でも、そんな子ほど島の外に出ることよりも、島の朝霧に包まれた景色が美しいと思う感性を持っている。

そう、ふと思うのだけど、おそらくは生まれながらにして美しい女性たちは、きっと自らが美人であることを知っている。ゆえに、あえて煌びやかな町で化粧などをして無理に目立つ必要がないことを認識していて、そういう自意識よりも身近な美しさに目が行く。そして、そのこと自体がさらにその人を美しくする好循環に入る。

これは、この物語に限らず、私の周りの数少ない美人達に共通した感覚であり、個人的に美人の方が性格が良いと思っている論拠だったりするのだけど。ただし、女性陣の前でこの話をすると、大ブーイングが来ること間違いなしなので、実際に確認したことはないのだけれど。

村長派と網元派、老人と若者、生粋の島人とIターン者、過疎化、色んな問題を抱えながら時間は過ぎていく。エピローグの部分でその解決方法の一つが示されるのだけど、ああ、その手があったかと驚いたものです。

 

新しい時代を作るのは誰か

「新しい時代を作るのは老人ではない」 

 

と言ったのはΖガンダムクワトロ・バジーナことシャア・アズナブル

 

そう、島の未来を自らの手で作ることを決断した若者たちに幸あれ。日本の各地でこんな若者たちが増えてくれることをオジサン世代としては応援していきたい。僕たちの世代は、若いころにそんな決断はできずに世の流れに沿うだけで、気が付いたらそれなりの年齢になってしまっていたのだから。で、この物語の続編は出ますかね?高校卒業後の4人の物語を読んでみたいのですが。僕にはこんな青春時代が欲しかったな。

 

島はぼくらと

島はぼくらと