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最適な料理ってなんだ?『タルト・タタンの夢』近藤史恵

町中にある小さなフランスビストロ。そこで起こる様々な小事件?をシェフと料理が解決していくほんわかショートストーリー集。元々は2007年に発売された本が文庫化されていたので読んでみることに。

ストーリー

テーブル数組とカウンター数席だけの小さなお店。そこに出てくる個性的な料理たちがほんとに小さくて些細なトラブルや悩みごとを解決していく。それは、たとえば食べた料理の味であったり、なぜか不格好なデザートであったり、不倫の悩みであったり、なぜか酔っ払った高校生だったり、素数に秘められた謎であったり。

メインシェフ、アシスタント・シェフ、ソムリエ、ボーイのたった4人で構成される小さなチームの中にある小気味よく進んでいく日常と、普段は無口なシェフが突然語り始めて謎を解決してしまうシーンを楽しむ物語。

感想

各ストーリーには必ず料理がでてくる。それは、タルト・タタン、ロニョン・ド・ヴォー、ガレット・デ・ロワ、オッソ・イラティ、カスレ、すいか、チョコレートなどである。

しかし、残念ながらフランス料理に詳しくないので、出てくる料理がまったく頭でイメージできない。その都度google先生に教えてもらいながら、ふむふむと読み進めていく始末である。

普段の読書であれば料理がどんなものなのか調べたりしないのだけど、この作品では料理の形とかがイメージできないと謎の解決に繋がりにくいのである。ああ、確かにその形状や作り方だったら、そこに気づくことができるよね、みたいな感じなのである。

料理は面白い。

人は生きるためにも食べるのだけど、食べること自体を楽しむこともできる。今の自分の肉体は半年前に食べたもので構成されている、とはよく聞く話で、マラソンランナーとしては食べるものにある程度気を使っているが、やっぱり楽しく食べることに勝てる料理はない。

料理に対するほんのちょっとのことから、そんなことまで分かるのか、という謎解き以外の発見がとても面白かった。特に肉や野菜を血抜きや水にさらして食べやすくすることは、栄養素を逃してしまうことと同じであり、料理の目的によって何が最適なのかが変わることである。

そう、最適な料理とは何か、を考えるきっかけを得ることができた。

すっきり食べやすい味、とろとろになるまで煮込んだ具、それはそれで確かに美味しい。だが、目的が違えば料理の下ごしらえも完成のさせ方も変わるのである。

なるほど、ちょっと勉強になった。でも、やっぱりラーメンはやめられそうにないけれど。

そして、各話で必ず登場する「ヴァン・ショー」という名のホット・ワイン。これ、一度でいいから飲んでみたい。食欲がないときや、少し落ち込んだとき、気分を柔らかくしてくれる飲み物があるというのはうらやましい。

 

で、「ヴァン・ショー」で検索してみたら、どうやら続編もでていたみたいだ。これはすぐに読まねば!

でも、やっぱり近藤史恵には大傑作「サクリファイス 」から続くロードバイクシリーズの続きを書いて欲しいとも思うのであった。

 

タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)