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【読書】ホット・ゾーン エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々(リチャード プレストン)

これは致死率が90%とも言われるエボラウイルスと戦った人たちの物語。

いったい、このウイルスはどこから来て、どこまで感染させてしまうのだろうか。

感染すると高熱と吐き気をもよおし、最後は全身から血を撒き散らして死んでしまう。臓器は機能を停止して単なる肉塊と化し、出血は固まることなく続き、まさに人体が【崩壊】して行くのだから手に負えない。

アフリカ大陸を出自とするそのウイルスは、どこからやってきて、どのように人に感染するのか。感染すると確実に死に至るものの、感染経路がはっきりしない。空気感染なのか飛沫感染なのか、エボラ感染者の血をかぶっても感染しない人もいた。

これは後から結果論で分かっているだけであり、感染したら自分も同じように死ぬと分かっていたら、その患者には可能な限り近づきたくないものである。

未知の感染症が怖いのは、感染経路も分からなければ発症後の治療方法も分からないことである。アフリカで発生したエボラがついにアメリカ大陸に入ってきたかもしれない、そのリスクに対応する軍と医師たち。

もしかしたら、自分は死ぬかもしれない。どんなに注意を払っていても、どこかでミスや間違いがあれば感染する可能性はある。そう腹をくくって戦いに挑んでいった先人たちには経緯の念しかない。

本書はこの2020年5月に文庫本化された。そう、新型コロナウイルスCOVID-19が爆発的に感染して多数の死者を出していて終わりが見えていないタイミングで、である。

このタイミングなのが偶然なのか、はたまた新型コロナウイルス感染拡大に伴い、過去のウイルスとの戦いを改めて知って欲しいから出版したのかは分からない。

でも、人類は常に感染症と戦い続けてきた。

その結果、疫学や公衆衛生の概念が確立・浸透され、ワクチン開発によって多数の生命を未然に救ってきた。

「分からない」ということは、とても怖いものである。

リスクをどこまで見積もっていいのか、その計算根拠すら新しい情報が出るたびに変わるのだから。

本書でも、エボラが発生した地域での血液採取による研究を拒む人たちが登場する。研究することや血清を作ることの意味が分からないため、やみくもに反対してしまう。

最前線で戦っている人たちは、様々な可能性を考慮して真摯に作業を黙々と実行しているが、「なんだかよく分からないし、騙されている気がする」と声を大にして妨げる人たちがいる。

感染症が拡大している中で、専門家でもない人が無駄に不安を煽り、医療機関に負担をかけているケースがあるようだ。うがい薬なんて何を言ってるんだろう、大丈夫かというレベルである。

でも、分からない人は、とにかく何かを信じて行動してしまう。きっと根が善人で信じやすいのだろう。悪気はないのかもしれない。

しかし、我々は少なくとも最前線で戦う人たちの邪魔にはならないようにすべきではないだろうか。怖いのはみな同じである。昨日調べ始めたものが今日分かるなんてものはない。時間は掛かるかもしれないが、少しずつでも前に進んでいると信じて、今日も自分自身にできることをやっていく、というのが最終的な全体最適解になると思いたい。