読む食う走る遊ぶ旅する

本を読みゲームを楽しみ副業アフィリエイトしながらJAL-JGCとANA-SFCで旅する記録

【読書】魔性の子 十二国記0(小野不由美)

コロナで外出をしなくなり、晴耕雨読的な生活どころか毎日読書が進むようになったとき、友人が「十二国記の新作が出たから未読なら一気読みオススメ」と言っていたので、ついに着手。

ついに、というと今まで知っていて着手しなかったように聞こえてしまいますが、実際には十二国記シリーズの存在を知りませんでした。ああ、なぜこんな面白いシリーズを読んでなかったのか。でも、今でも出会えたので楽しくエピソード0から読み進めていくのです。

どうやらプロローグということで、異世界物語ではなく現実の日本を舞台にした物語。

教育実習生として訪問した母校で不思議な雰囲気の生徒、高里に出会う。外見や雰囲気から感じるだけでなく、彼自身は幼少期に一年間神隠しとも呼ぶべき行方不明を経験していて、さらに彼にちょっかいを出した人間は不思議と怪我をしたり死んだりする祟りがあると噂されていた。

高里の周辺で起こる奇妙な事件は、最初は怪我で済んでいたものが、徐々にその惨劇はエスカレートし、同級生のみならず両親までもが狙われて死んでしまう。あげく、最後は学校の半分が地盤沈下するという、とんでもない展開に。

これは高里が十二国記の舞台となる「異世界」から彼を守り、連れ戻しに来ているものたちによる仕業だったのです。

高里は本当は異世界に生まれるべき人間だった。それが、何らかのはずみで日本で生まれ、一時的に異世界に戻ったものの(この期間が神隠しの一年間)、また日本で日常生活を営んで高校生にまで育っていたのである。

高里の周りで起こる事件を目撃した人間は、最初は遠巻きに見つめるだけで無視し、次に殺害によって排除を試みるが反撃に合い、次には周囲からの罵倒による世間的な抹殺を行い、最後には神として崇め奉り許しを請うとする。

この小説が書かれたのはもう約30年前に書かれているのである。我々は30年経っても変わることなく、同じようにマスコミは人を追い、攻撃し、排除しようとしている。全く成長していない、ということがよく分かってしまう。

最後、高里は本来生まれるべきであった十二国記の世界に帰る。彼はあちらの世界でとても大きな役割を持っっているのである。

しかし、高里を見守って行動を共にしていた教育実習生は違う。彼も幼少期には「自分は異世界を見たことがあり、本当はそこの住民なのではないか。現生は自分がいる場所ではない。ここではないどこか、が本当の居場所なのだ」と思っていた。そして、高里も同じように現世に馴染めない別世界の人間、の同士なのだと感じていた。

しかし、現実は残酷で、高里は本物の異世界転生者であり、教育実習生はただ現実から逃げ出したいだけの人間だったのである。

同士だと勝手に思っていた相手が、実は本物の異世界転生者で自分は違うと気付かされる終わりは本当に辛そうである。しかし、小さい、心が小さい。「どうして自分じゃないんだ」などと言ってみたところで運命なんてそんなものである。

誰もが息苦しくて、本来自分がいるべき場所はここではない。きっとどこかに理想郷があり、そこで自分は生まれ育つべきだったのだ。と心の中で思うことは自由である。誰しも世間との「ズレ」を感じながら戦っているというのが現実でしょう。

ただ、そうは思いながらも、それは幻想でしかなく現実は残念ながら目の前にある。と頭で理解しながら生きている人間にとっては、本当に異世界転生者がいたら頭がおかしくなるというのも分かる。しかし、それはそれで悲しい。物語は物語だから良いのであって、決して現実として目の前に現れてはいけないのです。

このプロローグが本編にどう繋がっていくのか楽しみである。

十二国記の世界は現実の日本と繋がっていて、かつ、どうやら化物的な生物が住んでそうな世界のようである。人間の現実世界を離れて、高里がどんな活躍をするのだろうか。 

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)

魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)