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アラフォーサラリーマンが本を読みラーメンを食べてマラソンを走って旅してIngressする物語。JGCとSFCのダブルホルダーだけどシンプルに生きて行きたいと願う日々。

【読書】好きを仕事にする羨ましさ「ハケンアニメ」辻村深月

読書

辻村深月さんの本を初めて読んだのは「島はぼくらと」でした。離島に暮らす同級生男女4人の抱えた背景、生き方、悩み、感情をとても上手に描いていたのを覚えています。今回もそのような人物の感情表現を楽しめるかと思って手に取りました。

hiro2460.hatenablog.com

さて、今作はアニメ業界のお仕事のお話です。

自分自身がアニメが好きかと聞かれると、ガンダムエヴァンゲリオンを一通り見てはいるものの、毎期深夜アニメ見たり声優の名前は知らなかったりする。世の中から見て「アニメオタク」に色分けされるかどうかと言われると難しいレベルなのではないかと自認してるくらいである。ゆえに、アニメがどうやって作られているのか、どういう人たちがどういう役割で仕事を進めているのか、ほぼ知らないレベルの人間が読んだ感想なのです。

さて、登場人物は「天才と言われるイケメンアニメ監督」、「美人プロデューサー」、「新人女性監督」、「雰囲気イケメン代理店担当者」、「神原画作成者」、「地域振興担当者」、「人気アイドル声優」などなど。

それぞれが、それぞれの想いを胸にアニメ製作に取り組んでいく。しかし、そこには天才としての悩みと葛藤、周囲の人間との軋轢、他人との付き合い、などなど、アニメ業界に関わらず仕事を進めていくうえでは必ずぶつかるであろう話だったりする。

人と正面からぶつかり、悩み、乗り越えてアニメを作っていく。最高のアニメを作りたいと監督、プロデューサー、アニメーターが全力を注いでいく。だが、アニメは製作に多大なる費用がかかるため、アニメ放映後のDVDやBlue-rayの販売収益で元を取る算段で行く。そして、その映像ディスクの売上が最も大きかった作品を「覇権アニメ」と呼ぶ。

うん、覇権アニメなんて称号があることさえ知らなかった。深夜枠で考えたときには録画している人が多いことを考えると、視聴率よりも売上が大きい作品=何回でも見たい作品、という図式になるのでしょう。

同じクールで「覇権」を取るために、かつてアニメの時代を変えたと言われる天才監督と、新人女性監督が対決する、という構図でストーリーが展開されていくのです。

そこには、アニメ制作者たちが睡眠時間を削り、様々な衝突を乗り越えてでも、自分が好きな作品に没頭していく姿がイキイキと描かれています。

ただ、日常的にこんなデスマーチな職場だと、本当に好きじゃないと続かないよな〜、という感じだったりします。机で寝る、パイプ椅子を繋げて寝る、休みが月に数日もない、なんてどう考えてもブラックな職場である。

終盤はアニメの舞台というか、ロケハンで使った場所を「聖地」として取り上げる地方自治体との話が出てきます。正直、個人的には聖地巡礼には興味がないけれど、アニメが好きな人にとっては意味があることなのかもしれない。

偶然ではあるけれど、近所の高校や図書館がアニメのモデルになったことがあり、それっぽい人がたくさん歩いているのは見かけたことがある。ああ、そういう風にアニメを見てる人もいるんだな、これも地域活性のツールとして使えるのかな、などと思ったが、ブームも過ぎると誰も来なくなり、「ああ、こんなものか」とも感じたのです。

最後は大団円で終りを迎えるのですが、賑やかで盛り上がって楽しい終わりであると思いつつ、ちょっとさすがにご都合主義っぽいんじゃないかな、とも感じたのも事実。ちょっと偶然重なりすぎなんじゃないでしょうか...

アニメ業界の仕事の話であって、業界内部の人から見ると「ぜんぜん違うよ」なんか「うん、こんな感じ」なのかは分からないけど、物語の登場人物たちはみんな「アニメが好き」ということだけは共通していた。

自分の仕事が大好き、という人が世の中にどれくらいいるだろうか。少なくとも私自身は好きと胸を張って言える状況ではない。なので、好きを仕事にできている人がちょっと羨ましいな、と思ったのでした。

アニメ業界が好きな人も、お仕事小説が好きな人も、最後はスカっとする楽しさが含まれている一冊でした。