【読書】灯台からの響き(宮本輝)
久々の宮本輝を図書館で。
あらすじ
主人公は板橋区の中華料理屋のマスター62歳。
2年前に妻の蘭子に急死で先立たれてからは店を閉めてのんびり酒と読書の日々。
ある日、なかなか読み進められなかった本を開くと、過去に蘭子宛に届いた葉書が落ちてきた。
そこには灯台が描かれていたが、蘭子は「まったく知らない人」と言って「間違いではないか」と返信を出したのだ。にもかかわらず、本に挟まれていた葉書。
これはきっと、本を読んだときに葉書を見つけることを想定した自分へのメッセージなのではないか。
そう感じて、唐突に灯台を巡る旅を始める。
灯台を巡りながら、子どもたちと改めて会話して、蘭子の過去を少しずつ探していく。
最後、葉書の差出人とも出会うことができ、描かれた灯台に辿り着いて度は終わりを迎える。
感想
60歳を過ぎて自分探しのような旅。笑ってしまいそうではあるが、高校生のころから父が始めた中華料理店で働きづめだったのだから、そうなるのも仕方ない。
一人で始めた灯台巡りも、気が付いたら家族や友人を巻き込み、自分一人では知らなかったこと、できなかったことが分かり、少しずつ解決していく。
起こってもいないことを悪い方に想像することが人生を小さくしている。
主人公の友人が、このようなことを言っていた。なるほど、これはちょっと面白い言葉である。
行ってみなければ分からないことがある、見なければ分からないこともある。でも、相手が自分に隠そうとしたことを知ることが、果たして幸せかどうかは知ってみないと分からない。
それにしても、蘭子が幼少期にかばった「手癖の悪い子」はクズである。そういう意味ではちょっと読了感が悪かった。
灯台巡りは面白そうなので、やってみようかな、と思った。